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えんのした旧ブログ
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一橋大学内で古本のリユースを中心とした事業を行っているサークルです。現在図書館内で古本を無償で提供しています。
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難波を少し歩いていると、自由軒の裏手あたりに「雁次郎横丁」がありました。織田作の小説にもしばしば登場する、狭い横町です。しかし今ではただの「ビルとビルとの隙間」ですね。ほとんどお店がありません。織田作の時代には天ぷら屋さんなどもあったといいますが…

さらに行くとなんだか新しいお店が集中する一角が。そこに「ジュンク堂書店」がありました。わ~い涼ませてもらお(笑)っと入って、検索機で「織田作之助」と入力。関東では置いてない作品集なども置いてあるか、と期待するも池袋のジュンク堂と同じでした(笑)まあ、しょうがないですよね。

涼しくなったところで本日のメインスポット『夫婦善哉』の舞台でもある法善寺横丁のほうへ行きましょう。と、その前に大阪松竹座のほうによります。この商店街には戎橋「おぐらや」があるのです。

「おぐらや」は『夫婦善哉』中にも出てくる老舗の昆布屋さんです。1848年創業だとか。昆布の佃煮とかおぼろ昆布なんかを売っています。さすがは昆布だしの関西ですね~

ひょっ、と店内に入って目当ての「山椒昆布」を探していると、「昆布茶です、どうぞ」とお姉さんがお茶をサービスしてくれました。さすがは老舗ですね~ほんとだったら僕なんかがふらふらするようなお店じゃないんでしょうが、観光客ということに免じて許してもらいましょう(笑)

「山椒昆布を煮る香いで、思いきり上等の昆布を五分四角ぐらいの大きさに細切りして山椒の実と一緒に鍋にいれ、亀甲万の濃口醤油をふんだんに使って、松炭のとろ火でとろとろ二昼夜煮詰めると、戎橋の「おぐらや」で売っている山椒昆布と同じ位のうまさになると柳吉は言い、退屈しのぎに昨日からそれに掛り出していたのだ。(中略)蝶子の姿を見ると柳吉は「どや、ええ按配に煮えて来よったやろ」長い竹箸で鍋の中を掻き廻しながら言うた。」(織田作之助『夫婦善哉』)

柳吉が手本にした「おぐらや」の山椒昆布は525円でした。これを自分へのお土産にしましょう(笑)

さてさてそれでは法善寺横町へ。「法善寺」は最も大阪らしい名所で、周りには古くからの名店が軒を連ねています。といってもお寺は戦災のために金比羅堂と不動明王しか残っていませんが…それでも狭い石畳とともに趣はあります。夜になるとちょうちんなんかの明かりでさらに風情があるとか。

 

まずはお参りを金比羅堂にお賽銭をし、それから不動明王に水をかけます。水を掛けてお願い事をすれば願いがかなう、といわれ「水掛け不動さん」として有名だそうです。実際ひっきりなしに参拝する人が来て水を掛けていました。そのために苔におおわれています。

 

そしてこの「水掛け不動さん」の真横にあるのが法善寺名物夫婦善哉のお店、その名も「夫婦善哉」です。ここから小説の題名がとられてるんですね~さっそく入ってみましょう。

入ってみると18席の店内はほぼ満員。こじんまりとしてアットホームなお店です。でも一人なのですぐにはいれました。メニューは「ぜんざい」と「冷やし」、「氷ぜんざい」のみ。しかも「冷やし」と「氷ぜんざい」は夏場だけの限定メニューです(値段はすべて800円)。

一日暑かったので冷たいものを…とも思いましたがそうはさせません(自分で自分に)。やはり小説中に出てきた「正統な」ぜんざいを食べなくてはっ!と普通のあったかいぜんざいを頼みました。

待つことしばし。店内をぐるっと見回してみます。お店自体は最近造り替えたそうで、新しい(入口は自動ドア(笑)です)のですが目の前の壁にはやはり織田作の『夫婦善哉』グッズが飾ってあります。『夫婦善哉』の初版本が何冊かと織田作の写真、それに映画化(この間亡くなった森繁さんと淡島さんが主役)されたときのグッズなんかですね。

ぜんざいが来ました。2杯に分けて一人分が来ます。だから「夫婦」ぜんざいなのです。夫婦茶碗と一緒ですね。それではさっそくいただきましょう。

国産小豆がたっぷり入っていますね。いわゆる「本物の」小豆、あんこです。そして結構甘いながらも意外にさっぱりとしている…口直しに塩昆布をいただくと甘い→しょっぱい→甘いという必殺コンボ(?)に。いいですね。巧い組み合わせです。そして各椀に一つづつ入っている白玉がまたイイ!ふわふわです。甘い→しょっぱい→甘い→ふわふわ→甘い→…という無限コンボが繰り広げられました(笑)

「法善寺境内の「めおとぜんざい」へ行った。(中略)ぜんざいを註文すると、女夫の意味で一人に二杯ずつ持って来た。碁盤の目の敷畳に腰をかけ、スウスウと高い音を立てて啜りながら柳吉は言った。「こ、こ、ここの善哉は何で、二、二、、二杯ずつ持って来よるか知ってるか、知らんやろ。こら昔何んとか太夫ちう浄瑠璃のお師匠はんがひらいた店でな、一杯山盛にするより、ちょっとずつ二杯にする方が沢山はいってるように見えるやろ、そこをうまいこと考えよったのや」蝶子は「一人より女夫の方がええいうことでっしゃろ」ぽんと襟を突き上げると肩が大きく揺れた。蝶子はめっきり肥えて、そこの座蒲団が尻にかくれるくらいであった。」(織田作之助「夫婦善哉」これがラストの山場です)

そして食べ終わった後にお茶を飲んでいると「どこからでっか?」。お店の人がフレンドリーに話しかけてきました。横浜からです、と述べると「それはそれはかっこいいところからようこそ」と言われました。???横浜はかっこいいんですかね?じゃあ大阪は?

ここのお店の人はみなさん着物なのですが、ずっとこんな感じです(笑)関西のノリです。
会計の時も「800万円いただきます」と言ってました(笑)
「はい、おつり200万円、毎度おおきに」。ごちそうさまでした~

この法善寺横町には「夫婦善哉」のほかにも、「正弁丹吾亭(割烹・小料理屋さん)」など小説に出てきたスポットが数多くあります。石畳の狭い路地、名店、不動明王…まさに『夫婦善哉』という小説は法善寺横丁なくしては存在しえないことが実感されます。そしてまた『夫婦善哉』という小説がこの横町に新たなエピソードを加えたわけです。

 

そんな情緒あふれる法善寺横丁に別れを告げ、道頓堀の方へ抜けます。



道頓堀沿いには『夫婦善哉』中にも出てきた関東煮(おでん)の名店「たこ梅」がありました。この店は同じく大阪出身の作家開高健も愛したそうです。ちなみに余談ですが僕は開高健のファンでもあります(笑)

 

日本橋駅に戻ってきました。ここからは『夫婦善哉』の世界から離れます。地下鉄に乗り、ついたのは「新世界」。そうあの「通天閣」です。

通天閣の下には大阪出身の天才棋士坂田三吉を記念して建てられた「大将」の碑があります。織田作は無類の将棋好きで坂田三吉のファンであり、彼の小説も書いています。通天閣も織田作の小説中に出てきたりしますが現在の通天閣は2代目で、織田作の生きていたころのものとは別なのです…

 

通天閣の展望台に上ると大阪が一望できました。大阪港、関空(らしきもの)、神戸、奈良の山々、京都の盆地、そして足元の大阪市内…やはり大阪は平野なのですね。どこまでも見渡すことができます。それでも今見えている大阪は織田作が「木の都」とよんだあの「大阪」ではないのだ、そんな変な感慨に襲われつつ、ビリケンさんに触ってご利益を願い、帰途に就いたのでした(笑)

 


終わりに

水島上等兵です。文学放浪記第2弾大阪編やっと完結しました!実際に大阪に行ったのは猛暑の8月下旬。そして今が10月中旬。当初は前回と同じく2回くらいに分けて更新するつもりが、大阪での出来事があまりに多くて結局5回に…しかも本当は昨日完結させたのですが、途中でデータが吹っ飛んでしまいました。結局途中からやり直しに(泣)でも大阪は楽しかったですよ、本当に。いろいろおいしいものも食べれて、まさに食い倒れの街でした(笑)むちゃくちゃ暑かったですけど…というか、今年の夏は大阪に限らず暑すぎました。でもこれからは涼しくなるので「放浪」にはぴったりの季節です。皆さんもお気に入りの書を携えて、ぜひ「文学放浪」してみてください!
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それでは長文失礼しました。

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